1 はじめに
弁護士費用については、以前は弁護士会で決めている報酬会規を基礎に決められることになっておりました。しかし、数年前に、規制緩和、競争原理の導入という世相の風潮を反映して、報酬会規はなくなってしまい、現在では各法律事務所または各弁護士が自由に独自の報酬体型を取り決めることができることとなっています。しかしながら現実には、多くの法律事務所または弁護士が以前の報酬会規を基礎として、自らの報酬体型を決め運用しております。
このことは、私とて例外ではありません。
ここでは、従前の報酬会規のポイントを改めてご案内すると共に、私の考え方もご紹介いたします。私の考えのところは「私の考え」と題して表示することで区別しておくことにします。但しスペースの都合上、すべてを網羅していないことをご了承ください。
ここでこのようなまとめ方をしているのは、もともとここで弁護士報酬会規
についての考え方をご紹介していたからで、 現在では、「私の考え」こそが当法律事務所の報酬体系にほかならないとご理解下さい。
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2 法律相談料 30分ごとに5000円
【私の考え】
それでは4時間相談したから4万円かというと、必ずしもそこまで請求できるわけではありません。ご相談事項について、即座に有効適切な助言ができなかったために時間がかかってしまう場合もあるのです。もちろんご相談事項が複雑多岐にわたるために時間がかかるときは当然、ご請求申し上げますが、そうでないときは効率よく相談すれば1時間で終わったであろうとみなして請求することになるはずです。また、相談にとどまらずに現実の事件処理の依頼をされるご予定の場合や、事件処理のための打ち合わせの場合には、事件処理のための費用を頂くことはあっても、それと別の相談料をご請求することは普通ないとご理解ください。
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3 書面による鑑定料 20万円以上30万円以下
【私の考え】
どの程度のものになるかによるとは思いますが、普通の一般的な相談事項について一通り文書で意見をまとめる程度であれば、これにあたると考えるべきではないと思います。ですから法律相談に行ったら、後で調べておくからといわれ手紙で回答がされたなどというときは、関係ないとご理解いただいて結構です
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4 民事訴訟事件
着手金(事件の依頼時にお支払いいただく費用)と報酬(事件が完結したとき、その成功の度合いに応じてお支払いいただく費用)との二つに分かれます。
いずれもその事件の経済的利益を基礎として算定いたします。訴訟が金銭の支払いをめぐるものであれば、その金額が経済的利益なのですが、訴訟にはさまざまあり、経済的利益自体をどう見るかがまた問題になるのです。これについては、却って分かりにくくなるといけないので、また別の機会にご紹介することにします。
ただどう考えても経済的利益を算定できないときは便宜的に経済的利益を800万円とみなして計算することのみご案内しておきます(但し離婚事件は別です。離婚事件については、6項をご参照ください)。
着手金の算定式
経済的利益が300万円以下の場合 経済的利益の8パーセント
経済的利益が300万円を超え、3000万円以下の場合
経済的利益の5パーセントに9万円を加算
経済的利益が3000万円を超え、3億円以下の場合
経済的利益の3パーセントに69万円を加算
経済的利益が3億円を超える場合
経済的利益の2パーセントに369万円を加算
報酬は、着手金の2倍です。但し、報酬は成功の度合いに応じてですから、完全に成功したときに着手金の2倍になるのであって、必ずしも2倍になるわけではありません。2倍が上限と考えればよいのです。では、現実にどうなるかというと、たとえば1000万円を請求していたのに、400万円しか認められなかった場合、400万円を経済的利益として計算することとなりますし、その相手から見ると1000万円支払わされる恐れがあったところ、
400万円で済み、600万円分、成功したので、600万円を経済的利益として計算することになるのです。
尚、着手金の最低額は原則として10万円とされています。また、境界紛争にかかわる事件では、着手金、報酬金の最低は、それぞれ40万円とされています。
以上の計算が標準額ですが、着手金についても報酬金についても、事件の難易度や依頼者の資力等を勘案して、 3割の範囲内で増減できることになっています。
【私の考え】
着手金の最低額が10万円とされていることは、他の弁護士はいざ知らず、私は無視することとしています。これでは5万円貸したのに返してくれないというような事件は、割に合わないので弁護士はお引き受けしませんと宣言しているようなものです。
また個人であると法人であるとを問わず、後述する顧問契約を締結された方からのご依頼の場合には、日常、事件や相談の有無にかかわらず顧問料をお支払いいただく関係上、3割減額して当然で、更に減額することもありえると思います。
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5 調停事件、その他、裁判所の手続によらない和解交渉事件
4と同様に着手金及び報酬が算定されますが、調停事件、その他、裁判所の手続によらない交渉事件は、4の場合の3分の2に減額することもありえます。また調停等が決裂し、次の法的対応を取らなければならないときは、その着手金は4によるところの半額にします。
【私の考え】
3分の2の減額は常に行うとして処理しています。なぜなら訴訟と異なり、依頼者も相当に譲歩していただくことを想定した手続だからです。また、別の手続が必要になったときですが、3分の2減額していた関係上、残りの3分の1を追加でご請求するにとどめるべきと考えています。報酬会規に従うと、最初から話し合いでは解決しそうもないものを、より多くの費用を請求するために話し合いにしたのではないかと不信を招きかねないからです。
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6 離婚事件の着手金及び報酬(NEW)
裁判外の離婚交渉及び調停による場合
着手金及び報酬 それぞれ30万円から50万円
訴訟による場合
着手金及び報酬 それぞれ40万円から60万円
但し、離婚事件に伴い、慰謝料問題や財産分与など経済的給付が問題となるときは、一般の民事訴訟や調停の場合と同様に算定した着手金及び報酬の金額以内で、適正妥当と思われる範囲で加算することができる。 |
【私の考え】 |
現実には、平均的な生活をされている方に対して、慰謝料や財産分与が問題となるときでも、加算してご請求することはないと思っています。 |
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7 仮差押・仮処分命令申立事件の着手金及び報酬(NEW)
着手金 原則として民事訴訟事件の場合の着手金の2分の1
審尋又は口頭弁論を経るときは民事訴訟事件の着手金の3分の2
いずれにしろ、最低額は10万円。
報酬金 原則として請求できない。
重大又は複雑な事件では、民事訴訟事件の報酬の4分の1
審尋又は口頭弁論を経たときは民事訴訟事件の報酬の3分の1
本案訴訟の目的が達成できたときは、民事訴訟事件と同様の報酬
【私の考え】
着手金の最低限の定めを無視すべきと考えていることは、民事訴訟のときと
同じです。
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8 破産などの事件の費用
a 事業者の自己破産の着手金
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50万円以上
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b 非事業者(一般個人)の自己破産の着手金
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20万円以上
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c 債権者としての立場で他人の破産宣告を求める場合の着手金
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50万円以上
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d 民事再生法に基づく民事再生の申し立ての着手金
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100万円以上
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上記の事件での報酬を一般民事訴訟事件と同じ算定基準による。
但し、その際の経済的利益は、配当額や債務の減免額、企業継続による利益等を総合的に勘案して決める。
e 裁判所を介在させないでの任意整理事件
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事業者の場合の着手金
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50万円以上
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非事業者の場合の着手金
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20万円以上
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この場合の報酬については、報酬会規では、各債権者に配当をして清算したときについてはaないしdの場合の報酬とはまた別の明確な基準が決められております。しかしここでは割愛します。それ以外の分割返済の合意ができたりした場合の報酬については、aないしdの場合の報酬と同様です。
【私の考え】
非事業者の場合は、報酬については債権者一社あたり、1万円ないし2万円と言うように単価を決めて報酬を決めています。事業者の場合も、同じような考え方でよいと思います。ただ事業者の場合は、複雑な問題を含む場合があるのでそのような場合は、どうするべきか私も悩んでいるところです。
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9 内容証明作成 一通、3万円ないし5万円
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10 顧問料 事業者:原則として毎月5万円以上 / 非事業者:原則
として毎月5000円以上
顧問料は、事件の依頼の有無、相談案件の有無にかかわらず、必ずお支払いいただかなければなりません。それによるサービスの内容は個別の顧問契約の内容次第です。
【私の考え】
私が考える標準の顧問契約によるサービスは、法律相談(簡単な書面での回答含む)、内容証明作成、契約書のチェック、遠隔地へ出張する場合の日当については、別途の費用を求めることなく行い、訴訟案件等の着手金、報酬についても当然一定の減額をすることだと思います。しかしこれは各弁護士によってさまざまですから、注意する必要があります。
顧問契約というと、法人との間で取り交わすことが多いのですが、私は21世紀は個人の方も顧問契約をしたほうがよいと思います。会社の仕事で悩んだが、会社の顧問弁護士に相談するのは大げさすぎるかなと思うときもたまにはあるのではないでしょうか。あるいはいつ個人的なトラブルに巻き込まれるかわかりません。そんなとき、顧問の弁護士に気軽に相談できるとすれば、年間6万円は、一種の保険料と考えれば安いものだと思います。
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11 その他
その他にも、刑事事件はどうなのか、契約書を作成してもらうときはどうなのか、遺言書はどうなのか、強制執行のときはどうなのだろうかなど、ご紹介しなければならないところもあります。しかしこれは次の機会に譲るとして、弁護士会などのホームページを参照していただければ幸いです。
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