子供を虐待する親の親権を制限するには


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子供を虐待する親の親権を制限するには

親権喪失制度は再び親子関係に戻ることができない

親権喪失制度は再び親子関係に戻ることができない

人の親であれば、子供に対しては無償の愛を注ぎ、慈しみ子供を育てるものです。民法もそれを当然の前提として、未成年の子の親についてはその未成年の子の親権者としてその地位を保障しています。
しかし、親が子供に暴力を振るったり放置したりするといった児童虐待が増えているのが現状です。
児童虐待から子供を守るためには、虐待を行う親から子供を引き離す必要のある場合がありますが、親権の存在が皮肉にもそのための障害となってしまうことがあります。
また親権には、人間教育し、ゆくゆくは良識あるまっとうな社会人になるよう指導したり、しつけをしたりする権利(義務)も含まれていますから(民法822条)、しつけだと言って子供に暴力を振るったり、暴言を吐いたりすることの正当化を図る親も少なくありません。
このように親権の存在が却って、虐待の正当化の根拠になってしまったり、また子供を虐待から救うための妨げになってしまったりするようなことになっては、民法が親権について規定している意味がありません。
そこで民法は、子供の親族などが家庭裁判所に申し立てることで、親権喪失の審判を申し立てることによって、子供に対する虐待を繰り返す親の親権を奪うことが認められています(民法834条)。
しかし、この親権喪失制度は親権を無期限に奪うものであるため、親の反省や子供の成長に伴って虐待が繰り返される心配がなくなり、かつその子供が虐待を繰り返していた親を受け入れることができるような状況になったとしても、再び、親子関係を結ぶことはできない可能性があります。
つまり虐待する親から子供を守るためとはいえ、強烈な劇薬だということがいえます。そのため、児童虐待の現場では、虐待する親から親権を取りたい場合でも親権喪失の申し立てはほとんど行われません。

親権停止の審判―虐待から子供を守るために

親権停止の審判―虐待から子供を守るために

そこで平成23年の民法改正により、前述した親権喪失の審判に加えて期限付きで親権を制限する親権停止の審判制度が新たに作られました。
あらかじめ期間を定めて、一時的に親権を行使できないようにする制度で、停止期間は最長2年間です。
親権停止を請求することができるのは、親による親権の行使が困難な時や親権の行使が不適当で子供の利益を害する時だと決められており、親権喪失の審判よりも要件が緩和されています。
虐待する親から一時的に子供を引き離すことで子供の心と身体の安全を守ると同時に、親も家庭環境を改善し親子の再統合を図ることが狙いです。
虐待を受けている子供が近親者にいて、見過ごすことのできない状況にあるというときには、親権停止の審判を申し立てたることも考えてみましょう。